エジプトとニワトリ

来年の話をすると爆笑する鬼がテレビのCMにも出ていますが、来年は酉年ですね。

酉はニワトリのことで、縁起の良い尾長鶏の絵の年賀状を用意された方も多いのではないでしょうか?

古代エジプトではニワトリは外国からもたらされた珍獣でした。

ハトシェプスト女王の後単独で王権を手にしたトトメス3世は、異国から珍しい植物や動物を集めたようで、その様子がカルナック神殿に残っています。古代エジプト史上初めてニワトリと考えられる鳥についての記述が現れるのもトトメス3世の治世です。インドからメソポタミア地方やシリアを経由して連れてこられた「毎日卵を産む鳥」がおそらくニワトリであっただろうとされています。

ヒエログリフでのニワトリの表記はとくに見つかっていないことと、ラクダ同様文字にもなっていないので、一般的な生き物ではなかったことは確かです。

トゥトアンクアメン(ツタンカーメン)の王墓の発掘時に王家の谷で発見された雄鶏の絵の描かれたオストラコンは有名ですが、下書きだったのか悪戯描きだったのか、色も文字もないものです。

一方、イシス女神の名前などにも用いられていた卵の文字はヒエログリフが成立したときにはすでに文字の一つとなっていました。つまり、一般の人にとって身近な存在だったことが分かります。

現代の私たちが卵と聞けば鶏卵を連想しますが、上記のような事情で古代エジプト人にとって身近な卵は別の鳥のものです。

可能性としてはアヒルかガチョウだと思うのですが、確証はありません。

ところで、私たちが卵を描くとだいたい丸い方を下、とがった方を上にして描きますが、古代エジプト人たちは上を丸い方にし、とがった方を斜め下に向けて描きます。これは鳥の巣の中の様子を良く見ていたためと思われます。

面白いですね。

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