「インシャーラー」はエジプト人の気質を体現する言葉

インシャーラーはよく「神の御心のままに」とも「神の御意志のに沿えば」などと訳されます。

おそらく、文字通りに訳すとそうなのでしょう。

何か約束をしたときに、エジプト人はよく「インシャーラー」と返事します。

多くの外国人がこの言葉をエジプト人のいい加減さを体現しているかのようにとらえます。

たぶんこれは、この答えをきいた人が「神がそれを許さなかったので」約束を果たせなかった、という風に言い訳に使われていると考えるからです。

私も初めてエジプトに行ったときにはそのような意味で習ったのですが、何人ものエジプト人たちとつきあううちに、どうも違うらしい、と、気がつきました。

彼らの使う「インシャーラー」という言葉は、「人智を尽くして天命を待つ」という意味が一番近いと私は感じています。

どんなに準備しても、早めに家を出ても、不慮の事故や本人ではどうにも出来ない事情やどうやっても回避のしようのない出来事で、約束を守ることの出来ない場合があります。

彼らはそういったことを全て神の意志によっておこった出来事であり、自分たちにはあずかり知ることの出来ない神の事情が絡んでいる、と、考えているのです。

だからといって、神の意志でどうにもならないから何もしない、という訳ではなく、約束を守るべく最善の努力をするのです。それでも、神の意志によって守ることが出来なかった場合もありうるので、確約を避ける意味で「インシャーラー」と答えるのです。

実際、私がおつきあいさせていただいたエジプト人たちのほとんどが、約束より早い時間に待ち合わせ場所にいますし、無償で融通を利かせてくれたりと、びっくりするほど真面目で気のいい人たちばかりでした。

もちろん、どの国でも同じぐらいの比率でいい人と悪い人、真面目な人と不真面目な人などがいます。

ですから、中には確かに「インシャーラー」を言い訳に使う人もいるかも知れません。

ただ、全員がそうではない、ということも事実です。

私は「インシャーラー」をエジプト人がいい加減であることを体現しているのではなく、むしろ真面目さを体現しているのではないかと、思っています。

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